『スヴェンとルディガーは剣の腕は確かなうえ、性格は対照的だからアードラーとして夜警団の上に立つのにバランスもいい』

 セドリックは自分の判断に誇らしげだ。遠い未来を見据えた強い意志を瞳に宿す。

『あのふたりを支えていくよ。とくにルディガーはね』

『逆、じゃないの?』

 セシリアは素朴な疑問を口にする。支えが必要なのは、どちらかといえば常に人に囲まれ、慕われているルディガーよりも不愛想なスヴェンの方な気がした。

『ああ見えて、意外とルディガーの方が難しかったりするんだよ』

 セドリックは軽く肩をすくめた。抽象的な言い方にセシリアは意味が理解できない。疎外感とでもいうのか、自分には入り込めそうもない彼らの関係に少しだけ嫉妬する。

 いつかわかる日が来るのか。期待と不安の入り混じる感情をセシリアは胸にしまい、それ以降彼女は兄の決意に口出ししなかった。

「で、妹のお前がセドリックの代わりにアードラーの副官をしているのか」

 不意にかけられたジェイドの言葉で我に返る。セシリアはなにも答えなかった。湯気が消え、すっかり温くなった珈琲を見つめる。肯定も否定もしない。

「あの人の副官をしているのは私自身の意志ですよ」

 それだけを声にし、ようやくカップに手をつけた。苦い液体が舌を滑り喉を潤していく。続いてジェイドを見据え、話題を戻した。

「それで、あなたの見立ては?」

 ジェイドの茶目っ気は鳴りを潜め、彼は複雑な表情を浮かべている。