ベッドのすぐ傍ら、ルディガーの手が届く距離でセシリアは立ち止まった。するとルディガーは下から窺う視線を彼女に向ける。

「怪我は? 薬の下手な後遺症は残っていないか?」

 ルディガーの口から飛び出した内容があまりにも意外でセシリアは今度は違う意味で固まった。そんな彼女にルディガーは呆れた表情で続ける。

「俺が動けないのもあって、どうせまた無理してるんだろ。ジェイドにも伝えたが、スヴェンにでも任せて、少しは……」

 そこでルディガーの言葉は途切れた。セシリアの両目から静かに涙が零れ落ちていたからだ。泣いていると気づいたのはどちらが早かったのか。

 セシリアとしても感情をコントロールする間もなく、ほぼ無意識だった。

 唇を真一文字に唇を引き結び、必死に耐えるも流れる涙は止められない。様々な想いが涙と共に溢れ返る。この涙の理由はなんなのか。

 ルディガーはセシリアの顔をじっと見つめてから、そっと彼女の手を取った。そしてさらに自分の方へとゆるやかに促す。

 ルディガーがなにを求めているのか理解できたが、セシリアは静かに抵抗した。

「お体に障りますよ」

「いいからおいで、命令だ」

 そう言ってベッドの端に腰を下ろさせ目線を合わせると、ルディガーは体に力を入れてセシリアを自分の元へと引き寄せた。

 セシリアは躊躇いつつも、おとなしく彼に身を委ねる。ルディガーは自分の腕の中に収めたセシリアの頭を控えめに撫でた。