今回の一件で、遺体が発見された場合には検視の必要性と強化が改めて問われ、経験と知識なにより信頼のあるジェイドは検視官として特別な立場でアルノー夜警団に籍を置くことになった。

 といっても普段は医師の仕事が主となる。今もそうだった。

「ご心配ありがとうございます。でも大丈夫ですよ」

「信用できないな。少し休め、命令だ」

 今まさに休もうとしていたのだが。厳しい口調のジェイドにセシリアはつい口を尖らせる。セシリアの顔色を読んでジェイドは補足した。

「お前の上官から預かってきた命令だ」

 ジェイドの言葉にセシリアはわずかに動揺する。

「そろそろ顔を出してやったらどうだ? 報告もわざわざ他の団員に行かせやがって。向こうから来られない状況なんだ。『忙しい』を言い訳にするのももう限界だろ」

 ルディガーはあの日から、ジェイドの診察と治療を受けながら城で療養している。全身に受けた衝撃は大きく、痛みで三日三晩熱が出た。

 それからも絶対安静が言い渡されている。その間、セシリアは心配しつつもルディガーの代わりに自分が動かねば、と必死だった。

 そうしていると、今度は見舞いに行くタイミングを失ってしまった。

「あの人の容体はどうですか?」

 セシリアは小さく尋ねる。