剣に願いを、掌に口づけを―最高位の上官による揺るぎない恋着―

「悪かった。少しあいつに肩入れしすぎて、お前の気持ちを考えていなかった。公平じゃなかったな」

 すぐに手は離れ、クラウスは困惑気味に微笑みセシリアに言い聞かせる。

「俺の言ったことは忘れろ。お前はお前の信念を貫けばいい」

 クラウスの言葉がざわついたセシリアの心にすんなりと落ちてくる。セシリアは素直に頷いた。

「……はい。ありがとうございます、陛下」

「なに、あいつが決着をつける問題だからな。外野はおとなしく高みの見物といくさ」

 意味がわからず尋ね返そうとしたが、やはりクラウスはマイペースに話を振ってくる。

「で、お前は連日寝る間を惜しんで、ここでなにをしているんだ?」

 自分が書物庫に通い詰めているのさえ知られていたらしい。おそらく一連の事件に関しても王の耳には入っているのだろう。

「アスモデウスに関しての情報を集めているんです。どこまでが正当な伝承で、どこまでが今回の件で新たに加えられたものなのかをはっきりさせようと思いまして。他にも調べものがいくつか……」

「なるほど。それで、どうだったんだ?」

 セシリアは暗がりの中でわずかな明かりを頼りに、持っている本に目を走らせると報告口調でクラウスに告げる。