誰かと幸せになって欲しいなど、託す気持ちにはまったくならない。セシリアの気持ちが向くのは自分だけでいい。彼女に触れるのも、その瞳に映すのも。

 当初、セシリアはスヴェンとルディガーの副官として任命された。だが結果的にルディガーの副官として収まっているのが現状だ。不服を唱える者もいない。

 ルディガーの一連の告白にスヴェンは呆れた面持ちになる。

「最初に言っただろ、俺に副官は必要ない。セシリアは自分でお前のそばにいるのを望んだんだ。今さら俺に妙な後ろめたさを感じるな」

「スヴェンにはないさ。あくまでもセシリアに対してだよ」

 ぬけぬけと返すルディガーにスヴェンはつい眉根を寄せた。しかし、続けられたルディガーの声は神妙なものだった。

「そばに置いて、自分のエゴなのにも関わらず、あの子の願いも叶えたつもりだった。お前の言う通り安全な高い位置から見下ろしていたんだ」

 副官になったセシリアは、まっすぐで一生懸命でいつも必死だった。ルディガーの役に立ちたいと、それだけを叶えるために言葉通り自身を捧げている。

 そんな彼女に妹として扱ってきた手前もあって、あっさりと翻った自分の本心を告げるのは難しく、気も引けた。

 副官として揺るがないセシリアの気持ちを汲んでやるのが上官の務めだと思っていた。だからいつも自分たちの関係を曖昧にしか表現できなかった。