桐谷社長は、社長室で話していると由美に

「君、何か見たことあるんだよね。」

ヤバいと由美は内心思った。

「うーん、思い出せそうで思い出せない。」

「奥さんとわたしが似てるのかもしれないですね。」

「妻か…。」

桐谷社長は、今は病院から会社に通っている。

「結婚して子供までいる…でも、妻と名乗る女も小さな子供を見ても何も思い出せない。」

由美は、罪悪感でいっぱいになった。


でも、汐里が悪いのだ、死んだ優馬を思い出していた。

優馬の分まで必死で生きて成功者の鍵を手に入れないといけない。 成功者を蹴落としても…。

「今日の午後からのスケジュールは?」

「…。」

「おい!」

「あっ!すみません!えっと。」

「70点。」

「ポカンとしてたからマイナス20点で50だ。」

しかし、自分が桐谷社長に惹かれ始めている事にも気がついた。

容姿端麗、顔にはシミ1つない顔。

貴族のようなオーラ。


お世辞ではなく彼には社長としての素質がある。

片岡汐里から奪ってしまいたい。

「君は、本当に気がきかないな。」

「え?」

「紅茶とお菓子だ…。」

「君は…。」

と桐谷が言葉を切って頭を抱え込んだ。

「社長!」

由美は、桐谷のそばでしゃがみ込んだ。

「大丈夫だ、ただの頭痛だ。」

その時、桐谷の頭にカメラのシャッター音が流れ込むようになり記憶がフラッシュバックした。