記憶をなくしているのに仕事と俺様キャラは健在だった。

汐里の事も覚えていなかった…。

病院から抜け出して新しい秘書を決めて仕事を始めた。

「誰だお前達は?」

という感じである。

「20点。」

新しく秘書に選ばれた新垣由美はどことなく汐里に似ていた。

「えっと、今日のスケジュールは。」

「君はバカなのか?そんな秒単位でスケジュールを組むなんてバカを突き抜けて愚か者だ。」

何よ…。入社1年目でこの言われたい放題は。

「あと、その厚化粧はなんだ?マイナス20点だな。」

そんな…。少し化粧しただけなのに。

「いくぞ。」

取引先の人とは和気あいあいとしている。

由美は、この内弁慶が!と思っていた。

車中、あそことは契約解除だ。

と言い出した。

あの大手を切る?頭の中が切れちゃってるんだと由美は感じた。

「お菓子とジュースを買って来い。」

コンビニの駐車場で由美は豪に命令された。

お菓子?ガキじゃん。

由美は適当に選んで豪に渡した。

「お前、俺をバカにしてるのか?チョコレートと烏龍茶は大嫌いなんだよ!」

由美は、袋を投げつけられた。

豪の逆鱗に触れて由美は炭酸水とポテトチップスを買って来た。

「50点」

豪は、それだけ言うと寝てしまった。

噂以上に傲慢で嫌な奴と由美は思った。

「マイナス50点。今、お前、俺を嫌な奴だと思ったろ?」

「全然違いますよ。」

外回りが終わると社長室の掃除を由美は命じられた。

必死に掃除をした。

掃除をした後、豪は、君はクビだと由美に言った。

そう、由美は掃除ベタで何故か部屋を掃除すると汚してしまう。

「クビにはしないで下さい。親に仕送りしをしなくてはいけないんです。」

「貧乏人の気持ちは分からないが親に免じて今回はクビは無しだ。親に感謝しろ。」

「はい!」

意識が飛びそうなくらい大変な1日だった。

同僚と飲んでうさを晴らさなくてはやってられない。

「何であんな奴が社長な訳?」

「うーん、分からないけど仕事は出来るしイケメンじゃない。」

同期入社の野田千鶴はため息をついて言った。

「みんな由美を羨ましがってたよ。毒舌でもね。」

「千鶴は、分かってない!」

「ちょっと飲み過ぎだよ、由美。」

果てしなく飲まないとやってられない気分だった。

帰りの電車で寝てしまって終点まで行ってしまった。

「酒臭い女なんて女をやめろ!」

朝からカミナリが由美に落ちた。

結局、昨日は漫喫で朝が来るのを待った。

上京したての頃は彼氏と漫喫で泊まったりしていた。

そんな事を思っていたら涙がポロポロ瞳から出て

「どうせ酒の飲み過ぎなんだろ、今日は、1日ソファーで寝てろ。」

なんだ、意外と優しいじゃん。

由美はそのまま夕方まで眠ってしまった。

起きると豪は部屋の掃除をしていた。

「起きたのか?」

「はい、すみませんでした。」

「前代未聞の秘書だな。社長室のソファーで寝るなんて。」