厨房にいるのは、凱の妻でシェフのまひるさんがいる。

彼女に注文を終えたのか、凱が戻ってきた。

「何かあったか?」

凱はそう聞くと、俺の向かい側に腰を下ろした。

「仕事はいいのか?」

俺の質問に、
「客もそんなに少ないし、ピークも過ぎたから大丈夫だ」
と、凱は答えた。

俺はふうっと息を吐くと、
「何かあったって言うか…まあ、早い話が逃げられたって言うところだな」
と、言った。

「逃げられた?」

凱は訳がわからないと言うように聞き返した。

「この間参加したパーティーで気になる女性ができたって言っただろ?」

「ああ、そう言ってたな」

「今日、彼女と動物園でデートをしたんだけど…」

「けど?」

凱は俺の顔を見つめた。