「えっ、ええっ?」

頬に手を当てて驚いた私に、
「いつも無表情ばっかりだから、笑った顔が見れてすごく嬉しい。

かわいいなって思ったよ」

二ノ宮さんは言った。

「か、かわいいって…」

社交辞令だ、社交辞令。

“かわいい”は社交辞令にしか過ぎないぞ。

紅くなりそうな頬を感じながら、私は何度も自分に言い聞かせた。

心臓がドキドキと激しく脈を打っている。

手を繋いだ時よりも、心臓の音がうるさいような気がする…。

「小山内さん」

二ノ宮さんが声をかけてきた。

「次は、小山内さんが好きなカバを見に行きましょうか?」

そう言った二ノ宮さんに、
「はい」

私は返事をした。

家を出た時は寒かったはずなのに、何だか温かいような気がするのは気のせいだと信じたい…。