「『カサブランカ』の営業の田原さんって言うんだけど…あの人、大嫌いなんだよね。

声がデカいし、存在そのものが暑苦しいし、長話が多いし、本当に大嫌いなんだよねぇ。

マジで行きたくないわー」

ヤだヤだと毒を吐いているゆかりに、
「じゃあ、断ればいいじゃないの。

“その日はパーティーに参加するので無理です”って」

私は言った。

「それができたら苦労しないわよ!

得意先だし、私のせいで取引がダメになったなんてことになりたくないし」

ゆかりは「行きたくないー」とグチグチと言っている。

「だからさ、私の代わりに行ってきてよ!

もうお金は払っちゃったんだし、断ったらキャンセル料を取られるのが目に見えてるし」

そう言ったゆかりに、
「嫌だって言ってるでしょ!

何度言えばわかるのよ!?」

私は何クソと言うように言い返した。