彼の後ろ姿を見送ると、私は名刺に視線を落とした。

「えっ…!?」

そこに書いてあった事実に、目を疑った。

『ニノミヤ硝子株式会社』

この会社って、結構有名なところだよね…?

いわゆる、大企業と言われている会社だよね…?

「二ノ宮だから…つまりは、この会社の関係者だって言うことだよね?」

ちょっと待って、何かとんでもない人と出会ってしまったんじゃないか!?

「いやいや、落ち着け…」

これは私じゃなくて、ゆかりに渡したものだ。

相手は“小山内ゆかり”だと思っているし、私もそう名乗った。

だから、この名刺はゆかりに渡すことにしよう。

相手が大企業に勤務しているとなったら、ゆかりは大喜びすることだろう。

そう結論をつけて財布の中に名刺を入れると、私もこの場を後にしたのだった。