前略、さよなら




僕はコップを千代に返すと
水筒に丁寧に蓋してから
トートバッグに戻した。




千代が急に足を止めたのは

もうしばらく歩いた先の
T字路のカーブミラーの下だった。




じっとミラーを見たまま
千代が動かなくなる。


「千代?」

「あれ、なんだろ」

千代がミラーの中を指さす。


ぐにゃりと曲がった表面に
人影がいくつか映っている。