今思えば慣れていないので当然なのだが 千代は足を滑らせて川へ落ちた。 ランドセルも教科書もびしょ濡れだった。 近くの公衆電話で呼び出したお母さんに 千代はひどく怒られた。 でもその時千代は 僕が無理矢理川を渡らせたことを 言わなかった。 僕が入れ知恵した 〝風邪で飛んだ帽子を取ろうとした〟 という嘘も使わなかった。 ただただ黙ってお母さんの説教を 聞いていた。