前略、さよなら



口がわなわなと震える。

何度も言葉が途切れてしまった。


「そこで1年後の僕は

僕に旅行なんか行かないで
千代と楽しい夏休みを過ごしてほしい

って頼んだんだ」


1年前の僕は淡々と言った。


「でもさ

なんで千代にそのことを
もっと早く言わなかったの?

他の大人に訴えることもできただろ」


「ダメなんだよそれじゃ。

僕は知ってるんだ!

相談所ってところが
千代の家にいったけど

お父さんの暴力には気がつけなかったって
お母さんが言ってた!


千代のお父さんは警察官だから
みんな全然信じなかったんだ!


それに千代自身が隠してた!


お父さんが暴力していることを言わなかった!」