僕は千代の前から逃げ出した。
病院から飛び出して
大きな声で叫んだ。
海の向こうへと
心の中のドロドロしたものを
吹き飛ばすようにして叫んだ。
「わあああああああああ!」
次の日学校を休んでも
自分で自分の頭を殴ってみても
体の内側にこびりついた
どす黒い焦げ跡のような気持ちは
消えることはなかった。
僕は電気の消えた部屋の角に向かって
謝ることしかできなかった。
〈1年1組 二ノ瀬陽〉
学校に行かなくなってから
3日目。
意味もなく籠った押し入れの隅で
僕は中学1年生の時の日記帳を見つけた。
本当は千代との楽しい思い出で
埋めるべきだった日記帳。
それを見た時に、僕は、
あの富漁の神様にすがることを
思いついた。

