「ち、千代
怪我、大丈夫?」
「・・・・・・うん」
千代は僕を見てはくれなかった。
千代の服の内側に
怪我がたくさんあるのだろう。
ずっと前につけられて
なくなった痣もあるのだろう。
僕が今まで見かけた
千代の怪我の中にだって
お父さんにつけられていたものが
あったはずだ。
そして、なによりも
いつもそんな暴力と一緒に
過ごしてきた千代の心は
もっと壊れているはずだった。
「なんで・・・・・・」
千代が自分に自信がないのも
自分の言いたいことを上手く
言えないのも
そう言うとげとげの檻の中で生きて
心が固く小さくなったから
なんじゃないんだろうか。
そして僕があの日
弱っちい、なんて言ったから
千代は変わろうと努力していた
んじゃないんだろうか。

