どう足掻いても遠くて、届かない。
可愛くない私なんかを、私が好きになりそうな人は好きにならない。選ばない。
クラスを移動し、廊下の古いポスターを剥がしながら笑う。
「私には遠い幻みたいなものだよ」
好意というものは、一方通行じゃ意味がない。好きだし、好きでいて欲しいのだ。
だが、何度も何度も恋は恋に発展する前の蕾の段階で枯れていく。枯れていくならまだいい。踏み潰され、荒らされることもある。
ほんと、幻のようだ。
女の子たちはいつも見ているはずなのに、少しずつ変化し、気がついたころには私は完璧に置いていかれてしまっていた。それを「努力がーとかいうんでしょう」と思う。可愛くなりたいなら、そうなる努力をしろと。それはわかっている。努力も必要だ。
「私だってやってる。けど口に出すようなことはしたくない。その努力が伝わらないのは仕方ないとして、さ。やってるけどっていったら、らしくないって言われて」
―――へぇ、菜々子もやってんだ。
―――そういうの全然だって思ってた。
えーえー、そうでしょうよ。そう思いながらごまかすように笑うしかない私。
「しんどいんだよね、結構」
新しいポスターを貼って、息を吐く。
授業が終わり、もう日が落ちるのがすっかり早くなってしまった。窓から見えるオレンジ色が消えかけている。置いていかれている気がした。


