先輩に抱き起こされて

 自分の全身が

 まだ震えている事に気付く。




「……」




 手も膝も擦り剝けたから

 あちこち血だらけだ。



 破れたブラウスを隠そうと

 上に着ていたジャケットのボタンを

 閉めようとして



 手が震えてるのと血だらけなのとで

 上手く 閉まらなくて



 見かねた可児先輩が脱いだ

 ジャケットにくるまれ



 震える身体ごと

 強く抱き締められた。




「無事で、よかった……」




 先輩の汗の匂いと良くつける香水の

 爽やかな香りがする。




「……」




 遠くでパトカーのサイレンが

 たくさん聞こえてきた。


 警察の人達のざわめきと

 警笛が聞こえる。




「……」




 本当にアタシ、助かったんだ?



 暖かい胸の中で

 ホッ、とした瞬間。



 アタシの意識は

 そのままブラックアウトした。