恋する24時 2


 男は、ポケットに入れていた右手を出して

 カシャン、カシャンと、慣れた手つきで

 変形式のナイフを弄ぶ。




「おれの好みは死んでからぁ、なんだけど、……お姉さん可愛いからトクベツにぃ、選んでいいよ?」




 口だけが上がる独特な笑顔で

 男が、ナイフを弄んで近づいて来た。



 これ以上近くにいたら

 ヤバい……。




「どっちも、お断りします!」




 アタシは、出来る限りの力で

 スーツケースを男めがけて投げつけて

 ダッシュで逃げる。



 なりふり構ってたら殺される。



 逃げろ、逃げ切れ!!



 公園を抜けるまで

 速く、ハヤク……。



 途中で、持っていたお弁当も投げつけて

 更にダッシュで駆け抜けようとして




「あっ?」




 慣れないヒールでのダッシュと

 公園の歩道のガタつきにつまづいて

 思いっきりコケてしまった。