心臓の音が、やけに自分の耳に響く。
もう、怖くて振り返れない。
『頑張って、……いよいよヤバくなったら大声出して助けを求めるんだよ?』
「はい……」
大声、なんて出てくれるのか
わからないけれど。
まずは逃げ切らなければ……。
『取り合えず、通話は繋げておいて、しゃべらなくてもいいから……』
「はい、わかりました」
アタシは、落とさないように
ジャケットのポケットに
スマホを通話のまま入れた。
そして後ろの
気配に、意識を集中して歩いた。
心臓がバクバク言ってる。
スーツケースを持つ手も震えていた。
怖い
コワイ……
すぐ後ろで
ザリッ、と砂利を踏んだような
音がやけに耳に響いて……
!?
強ばるカラダを
何とかして歩みを進める。
可児先輩でも、警察の人でも
誰か……、早く来て!


