流されないように、強く言わないと。
「ごめんなさい、加藤さん、シチューは他の方にお願いしてください」
きちんと、目を見て言えた。
「……そう、ですよね? こう何度もじゃ、ご迷惑ですよね」
「……」
シュンとする加藤部長に
多少の罪悪感を覚えつつ沈黙を貫く。
ワイングラスを持つ手を握っていた
彼の手の力が緩んだので
そっと、ワインを飲むふりをして
彼の手から逃れる。
もう、ごはんも食べたし
かたずけて家に帰ろう。
「加藤さん、今日はご馳走様でした、ハンバーグ美味しく出来てよかったですね」
そう言って、わたしは
自分の食べた食器をシンクに運ぶ。
「あっ、大丈夫ですよ? 俺がやりますから!」
あわてて立ち上がる彼に
わたしは、さっきのお返しとばかりに
「かたずけが終わるまでが、料理ですよ?」
と笑って言った。


