もう、何を食べているかも
わからなくなって
ワインでなんとか、お腹に流し込む。
「……月森さん、お願いがあるんですが」
「はい?」
「今度は、シチューを作ってみたいのですが、また教えてもらえませんか?」
「えっ……」
意外な申し出に、わたしは
思わず固まってしまった。
これっきりだと思っていたから
困ったな、次は全く考えていなかった。
出来れば、断りたい
こんな一軒家に住む家族がいる人との
次の約束より
きちんと未来のある恋に
限られた時間を使いたいから。
でも、なんと言って断ろう……。
「……すみません、わたし」
「月森さん! 俺、どおしてもシチューが食べたいんです」
へ?
ワイングラスを持つ手ごと
つかまれて、真っ直ぐに言う
加藤部長の迫力に、つい引いてしまった。
やだ、また押されてる?


