何故がすみません、と
謝ってしまいたい気持ちだけど
謝ったら隣がうるさそうなので
とりあえず黙って
前野さんの言葉を待つ。
「そうか、……玉井、他言無用にして欲しいんだが、とりあえず聴いてくれるか?」
「……はい」
前野さんが語った、過去のお話は
耳を疑うようなモノだった。
裏で、とは言え
とても会社がやるような
対策とは思えなくて……。
「はい?」
と、二度聞きしてしまうほど
驚いた。
「ね~、ホント愚策」
はい、本当に……。
「こっちも、退職者減らすのに必死だったんだからな!」
確かに、失恋して気まずくなって
会社を辞める女の子は少なくない。
けれど……。
来るもの拒まず
去るモノ追わず
そして、付き合っても放置……。
それは先輩、恨まれるわ
ヘンな噂は立つわ……。
アタシにとばっちりが来るのも
頷けてしまう。


