―――夜だわ。


私はどうして一人なのだろう?


澤口美江(さわぐち みえ)は、真っ暗な部屋の中で一人、


ソファーに腰をおろして、ふと思った。


美江は、70歳。


結婚もせず、一人で暮らしてきた。


美江の家は森の中にあり、周りにはもちろん他の家はない。


都会に住んでいた頃は、思いもしなかった。


こんなに一人が寂しいなんて・・・。


―――私は、【あの日】の事を未だに後悔している。


自分でも気付かぬうちに、美江は泣いていた。


いっそ・・


いっそあの世から迎えが来てくれたらどんなに楽だろう。


あの日に戻れたら―――。


18のあの日に戻ることが出来るなら―――。


そのまま、美江は深い眠りに落ちていった。