シャイが白い砂丘の彼方から歩いて来ると

一人の兵士が…

建物の隅でうずくまっている

「なぜ震えているの?」

シャイが尋ねると

兵士は振り返って驚いた

「ね、猫が喋った…」

シャイも驚いた

「そこに驚いたの…君が初めてだよ」

シャイはニッコリ微笑んだ

そして尋ね直す

「なぜそんな格好しているの?」

兵士は答えた

「いいんだ…僕は生きる資格の無い人間なんだから」

「話してみない…楽になるかもしれないよ」

シャイの問い掛けに

兵士は耳を傾ける

「もう、これ以上…人を殺したくないんだ」

シャイはキョトンとした

「そんなのおかしいよ」

兵士はシャイの碧い瞳を見つめた

「何故だい?」

「君、兵隊さんでしょ、兵隊さんのお仕事は人を殺すことでしょ」

兵士は苦笑した

「人を殺せなくなったんだよ、だから兵隊さんをやめるんだ」

「なぜ人を殺せなくなったの?」

兵士は少し戸惑った

「何故って…それは…」

シャイは黙って兵士の瞳を覗き込む