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「だからー、大丈夫ですってば!」

「そんな言ったって井上さん足元怪しいから」

「1人で帰れますから」

会社の飲み会を終えた店の真ん前、押し問答を繰り広げる井上と栄さんに小さくため息をついた。

 別に井上はそんなにアルコールに弱くない。ザルではないが、ちょっとくらい飲んでもいつもケロッとしている。だから、井上本人も油断したのだろう。
 いつに無く井上の足元がおぼつかない様子なのは、店を出る時から気づいていた。

 栄さん、井上にあからさまに飲ませすぎなんだよ。

 仕事が終わり次第集合だったから、最後に着いた井上は席を選ぶ余地もなく栄さんの隣に座ったはずだ。栄さんが煙草を吸ったりしてわざわざ遅く会社を出ていたのを見ていただけに、少なからず見える栄さんの下心に少しだけイラッとしながら、井上を背に庇う様にして栄さんとの間に割り込んだ。