「まぁ、俺はそんなに都会好きでもないんで、そこまで問題ないかなとは思ってるですが。彼女も大丈夫みたいでしたし」

 実際、絵奈はケロッとして『買い物はネットで出来るじゃん。私、白神山地とか樹氷とか見たことないから見にいきたいよ。あと、ねぶたも、弘前の桜も』と言ってくれた。

 絵奈はふわふわとしているように見えて、付き合ってみたら案外地に足ついてるタイプだった。

 ……また栄さんに捕まってるけどな。

 佐伯さんの肩越しに、絵奈が栄さんと話しているのが見えた。視線で助けを求められているような気がしなくもない。

 俺の視線に気づいたのか、佐伯さんは振り返って苦笑を漏らした。

「栄さん、また絵奈ちゃんに絡んでるし。絵奈ちゃん彼氏出来たんだから、さっさと諦めなさいよね」

 呆れた様子で佐伯さんはさらに続けた。

「前橋君、優秀な栄除けだったのになぁ」

 ……人を虫除けみたいに言わないでいただきたい。栄さんは言われなくても 追い払いますけれど。