「あー……よかった。酔った勢いって言われなくて」

「え?」

 酔った勢いって何の事? と井上が怪訝そうな声を上げる。

「2回目」

「何が?」

「告ったの。先週の井上が忘れたから」

「え、ちょっと待って。なにそ…」

 言葉を遮って少し強引に唇を重ねると、井上は拒むこと無く、応えてくる。1週間ぶりに触れた井上の唇は思っていた以上に心地よくて、角度を変えてもう一度重ねる。

「だって、覚えてないだろ?」

「え? えっと……それは……」

「なんで忘れんの?」

「なんでって…」

「俺ちゃんと好きって言ったじゃん」

「だって……」

「井上だって言ったくせに」

「ねぇ、それ……」

「自分だけ忘れてずるいだろ」

「そういうつもりじゃ……」

「つーか、前置き長すぎてフラれたかと思った」

「え……?」

 キスの合間に言いたいことだけ言って、井上には答えを言わせずに唇を何度も重ね合わせる。困惑している様だけど、抗うつもりは無いらしく、腕の中の井上は俺の胸にその身体を預けてきていた。