「おもしれーな。
あんな普通だったのに、本当に昨夜の事覚えてないんだな。
今まで家に帰ってて気付いてないだけで、記憶しょっちゅうなくしてんじゃねーの?」

「そっそんなこと無いっ」

「説得力皆無だから」

忘れられたら嫌だと思ってブレーキをかけたのは自分だけど、実際に忘れられるとめっちゃ痛い。

あんなにキスしたのも、抱き合って寝たのも覚えてないってなんなの。

あそこまで行って、仕切り直しって……なんだそれ。

気づけば思いっきりため息をついていた。

「俺、シャワー浴びてくる。
……覚えて無さそーだから言うけど、井上は昨夜シャワー浴びてっから」

次は飲ませない。次に一緒に飯食う時は、絶対に酒一滴も飲ませないからな。

そんな殺意にも似た決意を胸に抱いた土曜日の朝。

因みに、栄さんには月曜日、出社後速攻で釘をさした。あんまりやるとセクハラになりますよ、と。

あんまりも何も金輪際触るなよ。俺のなんだから。