ベッドに流れ落ちている井上の髪に手を触れる。

店の中で肩を寄せあっていた時と同じ、甘いフローラルの香りがした。 細い髪を辿って、くしゃりと井上の頭を撫でると、微かに井上は目を細めた。

「嫌?」

 低く問いかけると、井上は視線を俺に向けてゆっくりと唇を開く。

「嫌……じゃないよ」

 井上の表情を確かめながら、頭を撫でた手をゆっくりと滑られせて、その頬を撫でた。

「井上」

「うん?」

 両手で井上の頬に触れて、額を軽く触れ合わせる。

「栄さん、俺が黙らせていい?」

「?」

 どういう意味? と間近で問う眼差しに、一息ついてから答える。

「俺のだから、触んなって」

 微かに井上の瞳が見開かれたその後、小さく「うん」と聞こえるのを確認してから、唇をそっと重ね合わせた。