「待て。ケーキの前に、することあんだろ」

「へ?」

「仲直り」


手首をつかまれ、持っていたフォークがカーペットの上へと落ちていく。


それから、一瞬の出来事だった。



熱っぽい比呂の瞳が近づいてきて、いつもと同じ軽いキスを一回。


それから一度離れて、真っ赤になった私の顔を確認すると、ふっと笑ってから二回目のキス。



うっわ。


うわわ。



長いキスに耐えかね、ぷはっ!と息継ぎをする私。


いつもなら、ここで終わりなのに。



「わ!」



比呂の手が、私の後頭部に添えられグイッと引き寄せてくる。


それから今度は、初めましての深いキス。



うわー!


うわー!


うわー!




「やば。止まんなくなりそ」



名残惜しそうに離れた唇から零れた比呂の衝撃発言に、ついに耐えきれなくなった私は比呂の体を押し返す。



「わ、私のこと、女として見てないくせにさ!」


「は?何言ってんのお前」


「だ、だって、比呂私とイチャイチャとかするの興味なさそうじゃん!」


「はぁ〜?お前な。好きな女に色々したいって思わない男がどこにいる。健全な男子高校生なめんじゃねーよ。こっちが普段どれだけ我慢して……」



比呂にしてみれば、いつもと一緒。