「……こういうわけだからさ」


サラリとそう言い、肩に手を回してくる理玖くん。

前にあるお姫様な顔が、酸欠の鯉みたいに口をパクパクさせた。


ひっ……ひぃぃぃー!

何てこと言うんですかっ?!


『コイツ、俺の……こういうわけだから』って!

そんなこと言ってほっぺにチュウなんかしたら……何か思いっきり勘違いされませんか⁈


お姫様な彼女同様、私もあわあわと口がもごつく。

そんないたたまれない空気の中、レイカというその彼女は気を取り直したように腕を組んだ。

仁王立ちになって顎を突き出す。


「ちょっと理玖! どういうことなの⁈ 説明して!」


今さっきまでのキラキラオーラから一変、彼女は怒りのドロドロオーラを発し始める。


「……説明? 別に説明することなんてないけど?」

「あるわ! 麗華には聞く権利がある!」

「はいはい、わかったよ。あとでな?」

「ちょっと理玖!」


熱くなる彼女を軽くあしらい、理玖くんは私の肩を抱いたまま歩き出す。


「ちょっと理玖! 待ちなさいよ!」


キーキー騒ぐ彼女の声が背中に突き刺さった。