動けないままじっとしていると、下でリビングのドアがガタンと閉まる音が聞こえた。 しんと静まり返り、床一点を見つめていた目を部屋の中に向けてみる。 ベッド。 机。 窓。 桃香がいた頃の記憶が次々と蘇ってくる。 無意識にマフラーを掴んだ手に力が入っていた。 俺は…… 俺は……。