「……私が言ってあげられるのは、それくらいかな」


押し黙る俺にニコリと微笑み、母親はゆったりとした足取りでドアへと歩いていく。

その姿を目で追っていると、扉に差し掛かったところでいきなり振り返った。


「そんな難しい顏しないの」

「……?」

「何にも考えないで、自分のしたいようにすればいい」

「…………」

「そういうことで、今日はお母さん、お父さんとクリスマス楽しんでくるから」


真面目に話してたかと思えば一変、母親はふにゃりと嬉しそうに笑ってみせる。


「留守番よろしくね~、瑠依もお友達の家にお泊まりするってことだから」


そう言いながら、軽い足取りで鼻歌を歌いながら階段を下りていった。