「急にどうしたの? 何かあった?」


おばさんは私を食卓の席につかせ、向かいの椅子に掛ける。

食事中だったおじさんも箸を置き、私の顔をじっと見つめていた。


「いえ……何かあったとか、そんなんじゃないんです」

「じゃあ、急にどうして? やっとこっちの生活にも慣れてきた頃でしょう?」

「はい、それは……」

「もしかして、理玖と何かあったとかじゃないよね?」

「えっ……」


黙っていたおじさんが急にそんなことを言ってきて、思わずピクッとしてしまう。

すかさずおばさんが「えぇ⁈ あの子、何かしたの⁈」と身を乗り出した。


「ちっ、違います! 理玖くんは何も!」


内心あわあわと汗を飛ばしながら全力で否定する。

不自然なくらい顔の前で手を振ると、おじさんは「そうか……」と私の否定を受け入れてくれた様子を見せた。


おじさん……何気に鋭い人らしい……。