涙を浮かべた目で理玖くんを見上げると、理玖くんは平然と首を傾げてみせた。

〝何?〟みたいな、そんな表情で。

その様子が私にとどめを刺す。


「じゃあ……私、のこと……可哀想だから、って……」


最後の最後は涙声で、何を言っているのか自分自身よくわかっていなかった。


理玖くんを好きになって……

ドキドキした、

楽しかった、

嬉しかった、

そんな気持ちが涙となって溢れ出す。


「おやすみ」


理玖くんはそれ以上何も言わず、私の前を後にした。


私のこと、可哀想だから……。


だから……


優しくしてくれてたの?


出てこなかった言葉が、心臓を握り潰すように苦しめる。


『カップルで行くのがおすすめですよ~!』


浮かれたようなレポーターの声が、静かになったリビングに響いていた。