ちょっとプレッシャーでもかけて喝を入れてやろうと思ったけど、冗談も通じないほど参っているのがありありと窺えた。

学祭の演劇なんて、それなりに適当にやっておけばいいって思う。

だけど桃香は、人生を左右する大舞台にでも立つような、その位の勢いの緊張感を放っていた。

何事に対しても、きっとそうなんだと思う。

緩く、とか、それなりに、とか、そういうことができないんだと思う。

自分に課せられたことに対して、手を抜いたりとかできなくて、できる限り精一杯、一生懸命やっちゃう。

桃香はそういうコだって、今まで見てきて何となくわかっていた。

今日のことは、桃香が自らやりたくてやるわけじゃない。

麗華に仕組まれて、流されてやる羽目になっただけ。

それを思うと、桃香にとっては確かに酷なことだ。