慌てて顔を引っ込める。

気が付けば考えるよりも先に足が階段を駆け下りていた。

確実に目が合った。

その焦りから足音にも配慮できなくなる。

とりあえず走って逃げることに精一杯だった。


「はぁ、はぁっ……」


絶対バレちゃったよ!

どうしよう⁈


目があった瞬間、弾け飛びそうなくらい緊張が走った。

何も考えられなくなって、頭は真っ白で……。

でもたぶん、顔は真っ青だったと思う。


理玖くんはやっぱり……柏木さんと……。


当たり前に釣り合う二人。

でも、ここ最近の出来事ですっかり舞い上がっていた私にとっては、ただショックでしかなかった。


理玖くんのこと、頑張ってみようなんて……

何勘違いしてんだろ……。


自分が惨めで、馬鹿みたいで、廊下の先を見つめる目に涙が浮かんだ。