目を向けると、そこに立っていたのは麗華。

クルクルに巻かれた髪に指を絡ませ、小首を傾げる。


「お取り込み中申し訳ないんだけど……理玖、借りていいかしら?」


ツカツカとやってくると、純太に向かってそうきいた。


「え……あぁ、うん、いいけど」


突然の麗華の登場でキョドる純太。

有名ファッションデザイナーをしている父親を持つ麗華は、ここらでは有名な大富豪の娘。

誰に対しても上から目線で、基本命令口調で話す。

純太は黙って俺から離れ、途端に静かになった。


「理玖、ちょっといい?」


純太の存在は完全無視で、麗華は俺の腕を取る。

騒がしい純太から逃れるのにはちょうどいいなんて思うと、俺は麗華にそのまま身を任せていた。