「だから別に、どっちでもいいんじゃん?」


だ……だ、だ、駄目!

もうダメぇー!


不意打ちで見せられた柔らかい笑顔。

その表情が私の心臓を故障寸前に暴走させる。

きっと理玖くんは普通に言っただけ。

確かに携帯がなくても家でも学校でも一緒だし、必要がないってのはそれだけの意味で……。

でも、そう考えようとしても胸のドキドキが落ち着かない。


だって……

そんな風に言われたら……。


「まぁ、持ってて損はないだろうけどな? 最近のは結構機能も使えるし」


理玖くんはそんな補足をしながら私を離れていく。

窓に向かってゆったりと歩いていくと、カーテンに手を掛けてこっちに振り返った。


「じゃ、また明日。おさげじゃない桃香、楽しみにしてる」


さっきとはがらりと違うイタズラな笑みを浮かべ、理玖くんは窓の向こうへと消えていった。