「あっ、待ってください!」


エレベーターが来ないことに苛立ち、理玖くんは階段をスタスタ降りていく。

ビルから出ると、来た方向とは反対に向かって歩き出した。

小走りでやっと理玖くんの横に追い付く。


「おっそい……」


チラリと私を見下ろした理玖くんは、スッと当たり前のように私の背中に腕を回した。


「あっ、あの……」

「……? 何」

「あ……いえ、その……」


語尾が消えてく私の声。

何の抵抗もなく回された手にたじたじに……。

女の子と歩く時はこうやって歩くのが当たり前みたいに、理玖くんは平然とした涼しい顔をしている。

自然とこういう行動が起こせちゃうのがすごい。

でも……。

すれ違う知らない人たちの何個もの目が、とっかえひっかえ私に向けられていた。


こ……

怖いっ! 怖すぎるっ!