レジで会計を済ませようと、雑誌のコーナーを通りかかる。


特に興味なんてなかったが、なんとなく新聞紙を手に取った。


市議会議員の汚職事件、バスの衝突事故、有名女優の訃報。


どれもこれもどうでもいいニュースばかりだ。


次々とページをめくっていく。


ふと、ある記事に目が止まった。


『46歳男性 暴行され意識不明の重体』


ズキッ、と胸が痛む。


僕はその短い文を何度も読み返した。


そして、突然昨日の光景がフラッシュバックする。


血だらけのアスファルトと倒れた男性。


それに跨る九条 栞。


冷静になった今思い出すと、あまりにも凄絶たる有様だった。


滴る血なんて見たことがなかったから、吐き気すらもよおす。


そんな最悪な気分になりながらも、記事を読んでみた。


しかし、それは自分が想像していた記事とは全くの別物だった。


どうやら違う地域での見知らぬ暴行事件だったらしい。


なんだ、昨日のことじゃないのか。


そうやって、なぜか安心している自分がいた。


そして僕は新聞紙を元の場所に戻し、商品の会計を済ませた。