死にたい君に夏の春を

「織部はなにしにいくの?」


「太鼓の匠やりたくってさ。俺強すぎて誰も相手してくんないんだわ」


僕もそこまでやったことないから、こいつに負けることは目に見えてる。


「だからって僕誘うか?」


「だってお前、どんだけ誘っても断ろうとするじゃん。こうでもしないと付き合ってくれないでしょ」


「お前と違って忙しいから」


織部とは少し会話をする程度で、遊びに行くような仲ではない。


というか、極端に避けているのは僕の方である。


織部はみんなと仲良くなりたいような陽気な奴だ。


いつか無理やり誘われることはわかっていた。


「そういや、昨日メールで友達と話してたんだけどさ、夏だから肝試ししに行こうって話になって。お前も行かない?」


「いや、そういうのは……」


「お?もしかしてそういうの苦手?」


挑発するような言い方をする。


「違うって。どうせ夜の学校とかに行くんだろ?」


この辺に墓場とか森など、それらしい場所がないので、学校ぐらいしか行くところがない。


「よくわかったな。なぁ、楽しそうじゃね?」


「楽しくないって……。普通に犯罪だぞ?」


「え、まじ?学校なのに犯罪なの?」


「当たり前だろ」


「じゃあやめよっかな」


諦めるのが早すぎる。


まぁ、僕が行くような羽目にならなくて良かった。


行っていたら、絶対めんどくさい事になるに違いない。