数日後、栞が街から出るのを見送ることにした。
母親は今までホテルに泊まっていて、彼女も1度そこに泊まってから飛行機で北海道に旅立つらしい。
流石に空港までは行けないから、駅で見送る。
電車が来るまでの間、僕達はベンチで座って喋っていた。
「そういえば、僕も引っ越すことになったんだ」
「え?どこに?」
「京都」
「どこかよくわからないけど、遠そうだね」
北海道よりは遠くないけどな。
これで栞との距離はさらに遠くなってしまった。
「どうして急に?」
「もうあのクラスに居たくないから。僕のわがままで父親に頼んだ」
「クラスで、何かあったの?」
「落書きしたことをバラしたら織部に殴られた」
「ああ、バラしたんだ……。なんか、怪我ばっかりしてるね……」
あれから、1度も学校には行っていない。
きっと僕と栞がいなくなっても、あいつらは変わらずいじめも何事も無かったように過ごすんだろうな。
「今まで事前に危険を避けていただけに、かなり応えたな。でもなんか、痛みに強くなった気がするよ」
「ほんと?」
すると、彼女は僕の右腕をつねる。
「いった!いや、それは痛いだろ……!」
「ふふ、冗談冗談」
明らかに冗談で済まないし、馬鹿にしてるだろその笑い方は。
まぁ、今日が最後だし怒らないどくか。
そうしていると、電車がガタンゴトンと言わせて近づいてきた。
