いきなり、ぐわんと視界がよろける。


モロに拳を顔にくらい、足がもつれて転倒する。


それと同時に、女子の悲鳴が聞こえる。


「やめなよこんな所で!」


男子はその様子を遠くから見て、ただ笑っているだけ。


「うるせぇ。殴んないと気がすまねぇんだよ」


床に倒れた僕にまたがり、また拳を振り下ろそうとする。


その時、僕は言った。


「おい、そんなもんかよ織部。バットで殴るくらいこいよ」


「あ?抜かしたこと言ってんじゃねぇぞ!」


右も、左も、交互に何度も殴る。


もう目を開けられず、抵抗することなくただ身を任せるだけだった。


「がはっ……」


口の中が切れて、血の味がする。


「ちっ、弱ぇくせにイキんな」


殴ろうとした手を弱めたその時、教室の前の扉が開く。


「席付けー」


状況を何も分かっていない先生がいつも通り教壇に立つ。


それを聞いた織部は、先生の方に目がいく。


その隙に、僕は織部からするりと抜け出した。


「あ、おい高階!どこ行くんだ!」


先生の声も聞かずに、教室を飛び出す。