教室のドアを開けると、その騒ぎは一目瞭然だった。


女子達がキャーキャー泣き喚いて、男子はそれを見てただ突っ立っているだけ。


その中を、僕は気にせず通って自分の席に座る。


「なんで梨央ちゃんがこんなことされるの!?」


「誰よ!こんなことしたの!」


「ほら梨央ちゃん泣かないで……」


「酷い!可哀想!」


今まで自分たちが栞にしてきたことなのに、自分にされるとこうやって騒ぎ出す。


みんな樹を心配しているように見えるが、内心そんな励ます自分に酔っているんだ。


馬鹿な連中だ。


やっぱり、こんな奴らと向き合うなんて無理なんだ。


つんざくような声を聞くとイライラしてくる。


栞はこんなもんじゃなかった。


お前らのせいで栞は。


離れたところでふと男子が囁いた言葉が聞こえる。


「もしかして、九条がやったんじゃね?」


そしてついに、その苛つきは頂点に達した。


僕はそれを、抑えきれなかった。


「うるさいな」


泣いている樹を取り囲む女子に、聞こえるように言う。


「え?」


思ってもみなかった僕の言葉に、驚きを隠せていない。


「喚くなよクソアマ。耳が痛いんだよ」


「はぁ!?」


女子達は一斉に僕の方に寄ってくる。


「それは全部、僕がやった」


僕は立ち上がり、そう言った。