死にたい君に夏の春を



僕が目を覚ましたことで、警察官が数人この病室にきた。


あの夏祭り日のことについて、事情聴取をしに来たのだ。


そして、何故か栞についても聞かれた。


あの男とどんな関係があったのかとか、どういう子だったのかとか。


僕はその事については、何も話さなかった。


本人に聞けばいいのに、なんで僕に聞くのだろうか。


僕が晒す権利はないと思い、ずっと黙秘し続けた。


そんな僕に呆れたように、警察官はしばらくすると帰って行った。


部屋にいるのは、父親だけになった。


沈黙の中、父親が口を開く。


「一颯、なんで何も言わないんだ」


そんな父親にも、僕は黙る。


「これは重要な事件なんだ、知っていることがあったら言ってくれよ……」


なんだよ。


こんな時に僕の心配じゃなくて、事件の心配か。


相変わらず僕に興味なんてないんだな。


最低な親だ。


「あの女の子と、何かあったのか」


それ聞いて、思考が止まる。


「ずっと家にも帰らなかっただろ」


うるさい、お前には関係ない。


そもそも僕がこうなったのは、お前のせいなんだ。


「……父さんの、せいなのか」


「…………」


「……これを、言うつもりはなかった。でももう嘘をつくのは嫌だから。どうか黙っててもいいから、聞いて欲しい」


そして父さんは、語りだした。