死にたい君に夏の春を





ここはどこだろう。


真っ白で、体が動かない。


やけに目が乾いていて、口の中もカラカラだ。


できる限り、精一杯瞼を開けようとする。


人が沢山いる。


なにか言っているように見えるが、声は聞こえない。


だんだん認識できるようになって、顔の違いもわかってきた。


1人は父さんだ。


そして他にも、警察の服を着た人と、知らない女の人。


すぐ横には、栞が俯いていた。


悲しそうに下を向いている。


なぜ、そんな顔をしているのか。


またいつもみたいに笑ってくれよ。


僕はまた、目を閉じた。


時は過ぎ、また目を覚ます。


さっきと違って、とても暗い。


そこには、誰もいなかった


だが、窓から風が吹いている。


その窓に、少女が立っていた。


一体、何をする気なんだ。


どんどん窓枠を持っていた手が離れていく。


やめろ、だめだ。


死ぬな。


声が出ない。


手を伸ばそうとするが、動かない。


くそ、なんで、なんでこんなことに。


もどかしさに、涙がでる。


彼女の手は完全に窓枠から外れる。


栞。


栞……!