死にたい君に夏の春を



たこ焼き、焼きそば、かき氷、りんご飴。


仮面を付けながら食べるのには苦労したけれど、どれもおいしい。


栞は全部ペロリと食べてしまった。


こいつの胃袋はどうなってるんだと疑問に思う。


次は何をしようかと屋台を見回る。


栞はひとつの屋台の看板を見て、言った。


「ヨーヨーつりってなに?」


そこには、ヨーヨーで遊ぶ子供たちがたむろしていた。


「水風船を釣るゲームみたいなものだよ。
やってみる?」


「うん」


店の人に100円を渡し、釣り糸をもらう。


慣れない手つきで水風船を釣ろうとするが、なかなか引っかからない。


僕も横に座り、その様子をじっと見ていた。


「意外と難しそうだな」


「うん……。あ。あっちいっちゃった」


栞が動こうとした時、同時に僕と体がぶつかり合う。


「っ……」


咄嗟に栞は僕から離れた。


なんだよ、その目。


気まずそうに耳を赤らめて目を逸らした。


そして僕も目を逸らす。


そうしている間に、水に濡れた釣り糸は呆気なく千切れて落ちた。