死にたい君に夏の春を

「もう帰っていいよ」


彼女はペットボトルの水をそのままカップ麺に入れながら、そう言った。


なんだそれ……。


そっちが勝手に連れてきたのに、僕に対してのその態度が気に食わない。


意外にも呆気なくてつまらないじゃないか。


……つまらない?


まるで僕がなにか期待していたような言い方。


そんなはずはない。


僕は、面倒なことは嫌いなんだ。


今だって、こんな状況になってしまったことを後悔している。


「じゃ、また……」


九条と喋るのはこれっきりだと思ったはずなのに、『また』なんて言ってしまった。


彼女はこちらを見ず、何も言わない。


僕もそれ以上は言わず、廃墟を出て行った。